7/14
天気予報は晴れだった。
昼。
空気を切り裂くように雷が鳴った。
映画やゲームで迫力のあるシーンを沢山見てきたけど、本物の雷にはそれを遥かに上回る力があった。
音からエネルギーが伝わってくる。
フレックス勤務を活用して、出来るだけ早めに仕事を切り上げた。
製図試験で使う道具を画材屋さんに見に行こう。
資格学校で購入することもできるけれど、道具を集める瞬間が好きなので、自分の足で集めたい。
製図用のシャーペンを手に取る。
モノを作る人になった気がした。
便利になったこの時代にも、一つ一つ道具を駆使してモノを作り上げる人がいる。
道具は心の媒介なんだと思った。
帰宅。
せっかくの自由な時間なので、実家から送ってくれたズッキーニを天ぷらにしてみた。
あとはよっちゃんの好きなシソも一緒に揚げた。
キッチンで飲むビールはいつもより美味しい。
ふたりで残ったアイスを交互に食べて、雷が鳴る夜を過ごす。
24:52
7/12
夢を見た。
試験に出そうな範囲を頭に詰め込む。
短期記憶が抜けないように必死に反芻する。
テキストを閉じると頭の中の映像も同時にシャットダウンされ、何も浮かばない。
焦りと不安に襲われながら目が覚めた。
日曜日の試験がまだ脳に焼き付いていたのか、リラックスできていないようだ。
製図試験対策の講座は来週から始まるので、今週は自由だ。
料理、ゲーム、サウナ、読書、うたた寝。
何をしても許される。
縛られていた状態から通常に戻るだけで、こんなにも幸せを感じられることを改めて実感した。
人生にはメリハリが必須だ。
帰宅して冷やし中華を作った。
昨日よっちゃんが作ってくれたポテトサラダとポークビーンズもお皿によそった。
有吉とマツコの番組を見てのんびり笑う。
「アイスもあるけど、明日にしよっか」
明日の楽しみができた。
25:03
7/11
一級建築士、試験当日。
昨日の夜は下の階の人達がパーティーで騒いでいたので眠りが浅かった気がする。
高校時代、センター試験前に先生が
「なれなくても心配するな、目を閉じているだけでも脳は回復する」
と言っていたのを思い出して、ひたすら目を閉じて耐えた。
コンビニでサンドイッチと栄養ドリンクを買った。
"もしダメだったら"と考えると心臓が凍ってしまうような感覚になった。
頭が働いていない気がする。
よっちゃんの好きな白い花の香りがした。
花の名前は何だっけ。
試験が始まる。
「あなたが見たことのない問題は、みんなも見た事がない」
そう自分に言い聞かせ、湧き出る不安を拭いながら問題に取り組んだ。
持ち込んだ法令集がチェックされる。
必要以上の書き込みがあれば没収される。
ページをめくる手が止まる。
心拍数が上がる。
なんとかチェックをくぐり抜けた。
17:55 試験が終了した。
ここから資格学校で採点される。
生きた心地がしないまま、答えが出揃うのを待つ。
20:02 正答枝が読み上げられる。
祈るような気持ちで○と×を付ける。
ひと思いに殺して欲しい気持ちだった。
結果は 92/125 点
合格基準点は86点なのでおそらく合格だ。
そのあとオリエンテーションがあって帰宅した。
家ではよっちゃんが晩御飯を作って待っていてくれた。
「私は受かると信じてたよ」
人生のセーブデータが更新された気がした。
24:31
7/10
study
23:32
7/9
「試験前は有給を取得して勉強時間を確保してください」
みんながそうするなら、そうせざるを得ない。
仕事が落ち着いていて良かった。
この一年はコロナのせいで会社の飲み会も、友達からの誘いも少なかった。
それはみんな同じかもしれないが、誘惑に弱い僕にとっては助かった。
金曜日、今日は有給を取ってガストで勉強しよう。
平日の朝からパソコンを睨みつけている人が沢山いる。
ボックス席から外を眺める。
イヤホンから流れる3分55秒の曲が終わるまでは、頭を空っぽにしてみよう。
流れる車、バスを待ちながら汗を拭う人、Uber eatsの配達員がスマートフォンを見ながら自転車を漕ぐ。
こうやって循環する社会の仕組みを少しずつ調整する。
より良く。
より複雑に。
日本人は言葉を増やすのが好きなのか。
英語を母国語にしている人は「Apple」という単語にシリコンバレーのハイテク会社とコーカサス地方を原産地とする果実の2つの意味を重ねている。
ひらがな、カタカナ、漢字でもまだ足りない。
カタカナ語に曖昧な意味を結びつけ、それが最先端のように使い、ありきたりな概念をパッケージ化して安っぽく心を動かそうと躍起になる。
帰宅して、少し走った。
心と身体を万全にして挑む。
よっちゃんのカレーを食べる。
24:52
7/8
分厚い水蒸気の塊から大量の水が降り注ぐ。
地球が循環を繰り返す中で少しのエラーが発生する。
電車が遅れ、僕はランチを買い損ねる。
やらなければならない事を詰め込む。
今週の自分には余裕がない。
地権者との話。
聞く耳を持たない人との対話は難しい。
正攻法ではなく、何か突破口が欲しい。
もし僕がこの瞬間旧来の友人になれたら。
肩書を抜きに話ができればいいのに。
帰宅するとスパイスのいい香りがした。
よっちゃんが夏野菜カレーを作っている。
「ポイントはニンニクと生姜。あとガラムマサラ」
カレーにピーマンとナスが入ると夏を感じる。
蒸し暑い空気を一閃する。
テキストが湿気でふやける。
シャーペンで書いた計算式が薄く頼りない。
蝉が鳴く。
夏の夜を感じる。
24:22