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2月。
2月のイメージは華奢な赤。
2月の大雪が降る日、妹は生まれた。
レストランから窓の外を眺めていると、黒く渋い枯れ木が音もなく雪に包み込まれ、水墨画のようになっていった。
父さんはコーヒーに付いてくる、小さい銀の容器に入ったフレッシュを僕にくれた。
こんな状況だからなのか、少し気分が落ちた週末だった気がする。
それでも仕事はやって来る。
むしろ、ありがたい。
平常を取り戻すには、ルーティーンが必要だ。
自分から苦しい作業に向き合えるほど、自分を律する事は出来ない弱い人間なので、「やれ」と言われた事をやっている方が、真面目な人間として自分を肯定できる。
言われた事をやるだけ。
他人の力で山の頂上に到達し、そこからグライダーで飛び立つ。
飛んでいる気にはなるけど、上昇している訳ではない。
自分はいつになったら胸を張って「空を飛んだ」と言えるようになれるのだろうか。
空を見た。
雨が降る、雪は降りそうにない。
あの日の雪は蒸発し、空に登っていったんだろうか。
それとも地面に浸透していったんだろうか。
枯れ木に新芽が出る。
25:18